screen_reader
目次
~~SLIDESHOW~~
スクリーンリーダー
西本卓也 NVDA日本語チーム / NVDAユーザ会広島
nishimotz @ gmail.com / Twitter @24motz
- オープンソースのスクリーンリーダーNVDAとアクセシビリティ入門(2012-03-24 第45回 WEB TOUCH MEETING in Hiroshima)
- オープンソースのスクリーンリーダーNVDAとその日本語化(2011-11-18 日本音響学会東海支部 技術講習会 視覚・聴覚障害のための支援技術の現状と展望)
世界の動向
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- "the cream of the crop"
- NVDA の紹介
- 日本音響学会誌 Vol.66 No.8 2010 pp.427 Q&Aコーナー「視覚に障害があるパソコンユーザが無料で使えるスクリーンリーダ(画面読み上げソフト)はありますか?」
- 解説記事「インターネットと音声合成」
- 西本・西田: 電子情報通信学会誌 Vol.91, No.12, pp.1030-1035, Dec 2008.
NVDAの躍進(WebAIM の調査)
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- 回答者の約95%が視覚障害
- NVDAの利用者は8%
- 第2回 2009年10月の調査
- 49%が「2つ以上のスクリーンリーダーを使用」
- NVDAが主要なSR 2.9% / よく使うSR 25.6%
- 第3回 2010年12月の調査
- NVDAが主要なSR 8.6% / よく使うSR 34.8%
- 第4回 2012年5月の調査
- NVDAが主要なSR 13.7% / よく使うSR 43.0%
NVDAの概要
- NonVisual Desktop Access
- Microsoft Windows 対応スクリーンリーダー
- XP, Vista, 7, 8 - 32bit/64bit
- 無償で配布、オープンソース(GPL v2)
- 音声と点字ディスプレイによる出力
- 非営利団体 NV Access Limited(オーストラリア)
- 40ヶ国語以上に対応(音声エンジン eSpeak)
背景
- リハビリテーション法第508条 (Wikipedia)
- 「アメリカ連邦政府の機関は、機関が所有する電子技術や情報技術のアクセシビリティを向上し、身体障害を持つ人でも使いやすくするよう義務付けられた」
- 日本では JIS X8341
- アクセシビリティ・サポーテッド(AS)情報 (WAIC)
関連分野
Windows 8
- デスクトップ
- 従来のWindowsと互換
- 日本語音声合成 Haruka Desktop
- タブレット:マルチタッチ、ソフトキー
- モダンスタイル
- キーボード操作と読み上げ考慮
- アクセシビリティAPIの発展
- 厳しいセキュリティモデル
- RT版はナレーターのみ
関連分野(2)
-
- PDF の限界。メタ情報の欠落。リフロー不可。
- 音声コンテンツからマルチメディアコンテンツへ。テキスト音声合成が重要。
- 電子書籍の標準 EPUB は実質的に HTML コンテンツ。DAISY 技術を統合。
- 文書の構造に基づくナビゲーション、TTSへの読み情報の付与
- スクリーンリーダーの指導と普及
- 音声とキーボードだけの操作。Windows のショートカットキーは晴眼者も知識不足。
- タイピング習得の壁。練習ソフトが有効 ウチコミくん など
日本の音声合成エンジン
日本のスクリーンリーダーで使われてきた製品:
- 音声合成装置 富士通 FMVS-101 : MS-DOS 時代のベストセラー。通称 VSU
- リコー 音声合成ライブラリ : 95Reader など。軽いという評価。関連:AquesTalk (アクエスト社)
-
- IBM ホームページリーダーに搭載。
- 浅川さんの「早口音声の研究」を踏まえて最高話速を引き上げたという話。
- 開発終了
日本の音声合成エンジン(2)
-
- クリエートシステム開発 最近は Android 版も
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- コーパスベースの商用日本語TTS。テレビ番組のナレーションにも。
- 現在はHOYAサービス株式会社が販売
- Microsoft の音声エンジン
- Microsoft Agent と互換性のある SAPI4 エンジン L&H TruVoice TTS3000 が配布されていた。
- 現在は SAPI 5 対応の Microsoft Speech Platform エンジンを無償で配布。独自開発。
音声合成への要求
- 効率:早口化 3倍速以上への要求。記憶(トップダウン知識)で補完?
- 疲れない:リアルすぎないほうが疲れにくいという意見も。
- 応答性:キーエコー(出力開始までの遅延)音切れ(中断操作時の遅延)
- 音質:肉声に近い。ただし好みは多種多様。
- 自然性:プロソディ、ポーズ
- 正確性:テキスト解析・読み付与の精度:メタ情報やコンテクスト情報が使えないことが多い。
- 音声フォント:内容によって話者を切り替える
日本語の点字
- 点字ディスプレイ
- ケージーエス株式会社 日本の代表的な視覚障害者向け情報機器メーカー
- 六点入力:ホームポジションのFDS・JKLを使って点字キーボード方式の入力
- 日本語の点字:かな文字体系、文節分かち書き
- 外国語引用符、情報処理用点字
-
- 八点を使う方法、六点点字を3マス使う方法
日本のスクリーンリーダーの誕生
1983年ごろ VDM100 など
- 株式会社アクセス・テクノロジー。斎藤正夫氏。
- NEC PC-6001mk2 に音声合成が搭載されたことがきっかけという話
- PC-8801 + VSS-100 (1984 年 三洋電機が発売した外付け音声合成装置)から PC-9801 へ
- 「詳細読み」「音切れ」などの概念
日本のスクリーンリーダーの誕生(2)
1984年(昭和59年)1月
日本初の音声ワープロ「AOKワープロ」開発
- 会社案内 (株式会社 高知システム開発)
- 点字入力・音声出力
- 長谷川貞夫氏は対面朗読で計算機による日本語処理を独学。現在もAndroidアプリで文字入力など。
日本のMS-DOS対応スクリーンリーダー
1992年 画面読みプログラム「グラスルーツ」
- MS-DOS NEC-PC9801 対応
- 開発者:石川准氏
- 発売元:株式会社アメディア
日本語入力の音声インタフェース
フォネティック読み:
- ひらがな・けしき の け
- ひらがな・るすばん の る
文字の種類が多いことへの対応:詳細読み
- やくそく の やく → 約
日本語入力の音声インタフェース(2)
統合ソフトウェア
アクセシビリティのAPIや規格が未整備の時代に普及:
MS-DOS 用音声点字ブラウザ&エディタ ALTAIR(アルティア)
- (財)日本障害者リハビリテーション協会が開発したフリーウェア
- MS-DOS用 インターネットメールソフトWMAIL(Wメール)も同サイトで公開
- 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 から無償で提供されている「統合ソフトウェア」
統合ソフトウェア(2)
- 画面表示ではなくてアプリケーションの内部情報を音声化する Emacspeak を日本語化。
- 日本語と英語が混在した場合の読み上げなど独自の工夫。Windows と Linux に対応。IPA未踏ソフト。
- Emacspeak は現在も活発。
- T.V.Raman 氏は Google にて Accessible search や Android Talkback などを手がけている。
音声インタフェース
- 視覚障害者向け 使いやすいソフトウェアを設計するためのガイドライン(ユーアイズデザイン)
- 視覚障害者のための電子メール環境における操作性の検討 2000年当時の状況とEmacspeakの考察
アクセシビリティAPI
- MSAA, Java Access Bridge, IAccessible2, UI Automation など
- オブジェクトの階層モデル (NVDAの資料より)
- 名前:コントロールのラベル
- ロール:ボタン、ダイアログ、編集可能テキスト、ウィンドウ、チェックボックス、など
- 状態:フォーカス可能、フォーカス済み、選択済み、選択可能、展開済み、折りたたみ済み、チェック済み、など
- 値:スクロールバーのパーセント値、コンボボックスの選択状態、など
- 親オブジェクト、子オブジェクト、前オブジェクト、次オブジェクトへのリンク
アクセシビリティAPIの問題
- 良質な設計の安全なAPIが使える場合もあれば、危険なハックをしたり、情報不足に悩むこともある。例えば・・・
- 他のプロセスにコードをねじ込んでAPI呼び出しを覗き見して、画面に書かれた文字を判別する。高速に情報を取り出すために、プロセス間通信を避ける。
- 多種多様なアクセシビリティAPI、プラットフォームAPI、ツールキットに対応して、幅広いアプリケーションをアクセシブルにしなくてはならない。
- アプリケーションの実装の不備を補うこともある。規格に関する知識不足、規格そのものの不備、テストの不足など。
日本のWindows対応スクリーンリーダー
- 障害者職業総合センター 調査報告書No.20 渡辺哲也氏
- 日本初のGUI対応スクリーンリーダー
- 最新版 95Reader Ver.6.0 (XP Reader) で Windows XP までのOSに対応
日本のWindows対応SR(2)
- (株)高知システム開発
- 視覚障害者向けパソコン講座、視覚障害者への指導者養成講座の事実上の標準
- NetReader, MyWord, MyBook, MyMail などの関連アプリケーションも充実
- (株)アクセステクノロジー VDM100W シリーズは PC-Talker を VDM100 ユーザ向けにカスタマイズした製品という話。
日本のWindows対応SR(3)
- 業務で使えるSRの世界標準。強力なスクリプティング機能
- 日本語版は過去にIBMが販売。
- 現在は有限会社エクストラが販売。石川准氏作の自動点訳エンジンを搭載した自動点訳、点訳支援ソフトEXTRA for Windowsの開発・販売元。
- 株式会社ナレッジクリエーションの製品。VoiceText 搭載。View‐Net神奈川で「らくらくホン」の改良に取り組んだ新城直氏。
日本のWindows対応SR(4)
- SkyFish 社の製品。Windows Vista にいち早く対応。
- 95Reader と操作が同じという話。
- Windows が標準装備している基本的なスクリーンリーダー
- アクセシビリティ関係者向けに日本語音声エンジンの無償配布も。
Windows 以外の環境
- NTTドコモ「らくらくホン」シリーズは詳細読みまで実装。
- Android Talkback : N2 TTS とあわせて無料で
- Linux : GNOME ORCA 日本語環境はほとんど整備されていない
- Ubuntu 12.04 に Open JTalk が入るという話
- Mac OS X / iOS : VoiceOver 日本語入力には未対応
- 日本語音声合成は Lion から。iOS の iBooks は日本語読み上げ
NVDAの登場
開発者の言葉 より
- Leaders: Michael Curran, James Teh
- 視覚障害の当事者として、晴眼者と同じコストでコンピューターを利用したい。政府や福祉団体だけが責任を負うべきでない。
- オープンソースのSRを作れば協力を得られる?
- Linux にはすでに存在(GNOME ORCA)
- 不可能ではないだろうと思った
- 最初のリリース 2006年4月28日
- Python と C++ で実装
NVDAの成功
- 2007年1月(開発開始から8か月)
- Mozillaから支援:Firefoxウェブブラウザ対応
- CSUN国際会議への参加
- 世界中から多くの人が開発に参加
- 小さな活動から実用的なSRへ
- フリーなソリューションの実現
- アクセシビリティの世界でリスペクトを得る
NVDAの価値
- スクリーンリーダーのコストは許容できない
- 視覚障害者の非雇用率は多くの国で60%以上
- ソフトウェアやWebサイトの開発者に
- アクセシビリティのテストが広まることも重要
- スピーチビュアーは開発者に便利な機能
NVDAの普及
- 家庭で無料で使えるSRとして
- IT分野でJAWSの代替として
- ニュージーランドの公共図書館のコンピュータ
- Yahoo! アクセシビリティのテストやデモ
NVDA日本語版のWebサイト
NVDAの日本語化
ITRC UAI(Universal Access to the Internet・高齢者と障害者のインターネット利用)研究会
- 東京女子大学 渡辺隆行 教授:W3C WAI および JIS X8341-3 などの標準化活動
NVDAの日本語化(2)
2008年
- 4月26日 日本語化プロジェクトの(最初の?)ミーティング記録
- 12月 NVDA R2540日本語版公開 ミツエーリンクス アクセシビリティBlog
- 日本語への翻訳、無変換キーを使う独自の改良など
- 12月 第45回 福祉情報工学研究会
- 特別企画「オープンソースソフトウェアとWebアクセシビリティ」を開催
NVDAの日本語化(3)
2009年
- 3月 sourceforge.jp プロジェクト登録
- 定期的にミーティングを開催
- 12月 定例ミーティング。日本語音声エンジンも日本語IMEの読み上げ対応も進展せず。広島から新家氏が参加。Python コミュニティの有名人が参加。
- 12月 Open JTalk がリリースされる。
NVDAの日本語化(4)
2010年
- 1月 NVDAのソースコードレビューを始める。
- 2月 PythonからMSAAでIMEの情報が取り出せるようになる。IME対応を新家氏が引継ぐ。
- 8月 Open JTalk を NVDA の音声エンジンとして組み込む
- 9月 音声エンジンと日本語入力の詳細読みに対応した最初のリリース jpdev100909 を公開
- 9月 オープンソースカンファレンス2010 fall に出展
NVDAの日本語化(5)
2011年
- 2月 NVDA 2010.2 ユーザガイド点訳版を公開
- 2月 Twitter @nvdajp の利用を開始
- 4月 2011.1.1j で実験的な日本語点字ディスプレイ対応を実装
- 6月 NVDAユーザ会広島 活動開始
- 12月 2011.3j
- JTalk の「声の高さ・抑揚の調節」を実装
NVDA日本語チーム
2012年
- 4月 2012.1j 日本語IMEサポートの改善
- NVDA翻訳チームの日本語を西本が担当
- NVDA日本語チーム発足
- 6月 2012.2.1jp
- 本家: インストーラー改良、アドオン機能
- 点字ディスプレイ対応を改善、音声エンジンのプラグイン化
- 9月
- 文字説明モード(短い説明と詳しい説明)
- 東京でNVDAワークショップを開催(PyConJP 2012併催)
- 11月
- 本家: Windows 8 対応・東アジア言語対応を含む 2012.3
- WBU(世界盲人連合)総会で各国の当事者団体がNVDAへの資金援助を表明
- 12月
- 日本語チーム 2012.3.1jp
- 点訳エンジンの改良に着手
NVDA日本語チーム(2)
2013年
- 2月
- 文字入力サポートの本家版実装への移行
- 4月
- ソースコード管理を bzr から git に移行
- 本家: PowerPoint対応 2013.1 リリース候補1
- 日本語チーム: 2013.1jp ベータ2
nvda.jp
日本語点字ディスプレイ対応
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NVDA日本語版のダウンロード件数
NVDA日本語版サイトのページビュー
使ってみる
- Windows7 ショートカット(マイクロソフト)
- NVDA 最初に覚えるショートカットキー (まほろば)
- NVDA(インストーラー版)起動 CTRL-ALT-N
- NVDAキー:無変換キー, Insert キー, CapsLock キー
- ヘルプ NVDA-N - ヘルプ(H) - ユーザーガイド(U)
- キーボードヘルプモードのON/OFF: NVDA-1
- NVDAの終了 NVDA-Q
- 読み上げモード NVDA-S
Firefox で Web を読む
- コンテンツを開くと読み上げが開始される
- 停止 CTRL または SHIFT
- 再開 NVDA-下矢印
- 一文字づつ読む 左矢印 右矢印
- 一行ずつ読む 下矢印 上矢印
- メニュー操作 ALT / タブ切替 CTRL-TAB, CTRL-数字
NVDAの基本操作
- 読み上げモード切替 NVDA-S
- 1文字パススルー NVDA-F2
- 日付と時刻 NVDA-F12
- クリップボード NVDA-C
- 現在のフォーカス NVDA-TAB
- タイトル NVDA-T
- アクティブウィンドウ NVDA-B
Firefox で Web を読む(2)
- 見出しジャンプ H
- 次の見出し要素 数字 1 2 3 ..
- 前の見出し要素 Shift+数字
- リンクの移動 Tab キー または K (未読U/既読V)
- リスト L
- リスト項目 I
- ランドマーク D : ページ構成要素を意味的に区切るもの
- ブラウズモードの要素リスト:NVDA-F7
Web のテーブルを読む
- テーブル T
- テーブルの中では 上矢印 下矢印 で要素を(左から右へ、上から下へ)1つずつ移動
- テーブル内の移動:CTRL-ALT-上矢印または下矢印
- テーブルのセルの配置に従って上下左右に移動。端まで移動したらそれ以上進まない。
Web のフォームを操作する
- フォームに移動 F
- エディットボックスへの移動 E
- フォーカスモードに入る: NVDA-スペース。ガチャっという効果音。
- Esc でブラウズモードに戻る
- コンボボックス C
- チェックボックス X : 要素の一つ一つに順に移動
- ラジオボタン R : スペースでチェック
- ボタン B
NVDA日本語版操作ガイド
課題
screen_reader.txt · 最終更新: 2013/08/16 22:15 by Takuya Nishimoto